研究成果

【プレスリリース】カーボンナノチューブの近赤外発光の波長制御・高機能化技術を開発

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炭素原⼦のみで構成されるカーボンナノチューブは、近⾚外領域の発光を⽰す特性を有し、バイオイメージングや通信技術など先端光技術への応⽤が期待されています。⼀⽅で、⼀般にカーボンナノチューブの発光効率は低く(1%未満)、発光波⻑もチューブの構造で決定される制限がありました。最近、カーボンナノチューブに化学修飾を⾏い部分的な⽋陥形成を⾏うことで、発光効率が向上し発光波⻑が変化した新たな⽋陥発光を⽣み出せることがわかってきました。しかし、従来技術では修飾反応の違いによらず類似の発光特性が観測されており、さらなる光機能創出には⽋陥構造を変化させて選択的に異なる発光波⻑を⽣み出すなどの新たな修飾技術を開発することが求められていました。

白木智丈准教授、藤ヶ⾕剛彦教授(工学研究院/I2CNERエネルギー変換科学ユニット)らの研究グループは、修飾分⼦にナノチューブと相互作⽤をする部位を新たに導⼊する分⼦設計を開発し、従来技術よりも⼤きく⻑波⻑化させた⽋陥発光を⽰す⽋陥配置を選択的に形成させることに成功しました。さらに今回の設計では、クリックケミストリーという技術を使って、形成させた⽋陥部位に選択的かつ⾼効率に別の分⼦を後修飾できることを明らかにしました。
今回の発⾒は、ナノチューブ上に任意の⽋陥構造を形成させるという科学的に新しい⼿法を提供するだけでなく、近⾚外光を利⽤した先端光科学技術の開発に貢献すると期待されます。
本研究成果は、2022 年11 ⽉17 ⽇(⽊)に⽶国化学会の国際学術誌「ACS Nano」にオンライン掲載されました。

プレスリリース本文は九州大学HPよりご覧いただけます。

掲載誌:ACS Nano
タイトル:ortho-Substituted Aryldiazonium Design for the Defect Configuration-Controlled Photoluminescent Functionalization of Chiral Single-Walled Carbon Nanotubes
著者名:Boda Yu, Sadahito Naka, Haruka Aoki, Koichiro Kato, Daiki Yamashita, Shun Fujii, Yuichiro K. Kato, Tsuyohiko Fujigaya, Tomohiro Shiraki
DOI:10.1021/acsnano.2c09897

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欠陥発光を示す修飾カーボンナノチューブの模式図