概要

研究目標

九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER:アイスナー)は、低炭素排出、経済効果の高いエネルギーシステムの構築やエネルギー効率の向上などに寄与する基礎研究に取り組んでいます。I²CNERが目指す研究の中には、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、燃料電池における高分子膜、生体触媒を含む新規触媒の開発や、水素を燃料として安全に生産・貯蔵・利用するための技術があります。また、CO₂の回収や貯留技術、あるいはエネルギーの有効利用についても研究しています。さらに、研究者の連携や学際的研究(異分野融合)を通じて革新的な研究を促進するような、国際的かつ学術的環境を整えることも、I²CNERの重要なミッションです。

総長メッセージ

カーボンニュートラル・エネルギー社会実現に向けて

九州大学総長
石橋達朗

次世代に対して環境に優しいエネルギーを持続的に供給するために、CO₂排出を伴わない再生可能エネルギーを使用するグリーンイノベーションが求められています。2020年(令和2年)10月26日に召集された第203回臨時国会の所信表明演説で菅義偉首相は、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。

九州大学では、カーボンニュートラル・エネルギー社会の実現を目指し、本学の強みである環境・エネルギー科学研究を包括的に推進してきました。そして2010年 (平成22年)12月1日には文科省「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI))」の採択を受けて、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER)を設置しました。

I²CNERは、この10年間、日本と世界のエネルギー問題の解決に向けての基礎研究に取り組み、国際ネットワークの構築と海外主任研究者を構成メンバーとした国際協働体制を実現し、WPI基準 (“world premier” status) に到達したという最終評価をWPIプログラム委員会から受け、2020年(令和2年)4月1日、WPIアカデミー拠点に採択されました。今後は、これまでに築いた国際ネットワークを基に、戦略的パートナー大学(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、マサチューセッツ工科大学、インペリアルカレッジ・ロンドン、スイス連邦工科大学、エディンバラ大学)との連携の強化、国際ネットワークの充実、若手・外国人・女性研究者などの多様な研究者の積極的な雇用、国際頭脳循環の加速を通して、カーボンニュートラル・エネルギー社会の実現に資する最先端の基礎研究拠点を目指します。

また、I²CNERは2019年(令和元年)8月26日、Petros Sofronis所長がクロスアポイントメントで所属するイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校と戦略的パートナーシップを締結し、イリノイ大学サテライトの継続により、相互の共同研究を通じて、二酸化炭素排出量削減に関するエネルギーの高速変換科学の国際的研究機関として、さらにその研究活動を進めていきます。

九州大学は、カーボンニュートラル・エネルギー社会の実現を先導するI²CNERを中心に、エネルギー科学での優れた研究成果の創出やトップレベルのリーダー研究者の育成に、総力を挙げて取り組みますので、皆様のご支援とご協力をお願いいたします。

所長メッセージ

カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER:アイスナー)のウェブサイトへようこそ。

カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所長
石原 達己

現在の地球温暖化などの環境変動問題は深刻さを増しており、再生可能エネルギーに立脚するカーボンニュートラル社会への移行が、世界的に取り組まないといけない重要な課題となっています。カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER)は2010年にWPI研究所として、カーボンニュートラル・エネルギーという名を冠した当時唯一の研究所として設立され、2020年にWPIアカデミーに移行しました。13年にわたり、カーボンニュートラル社会実現のために必要な革新的な科学と技術の開発に、総合的に取り組んできました。

化石燃料を中心に使用する現在の社会から、再生可能エネルギーに立脚した社会への移行は、依然として多くの課題があり、革新的なエネルギー変換技術のみでなく、物質とエネルギーが連携した利用体系の構築が必要で、総合的な社会システムの設計が求められています。この点で、I2CNERはUnder one roofの下に、お互いに連携した革新的なエネルギーの変換技術の創出に取り組んでいます。

太陽光発電や風力といった再生可能エネルギーは、地域偏析のない、広く平等なエネルギーであり、地球上のすべての人に平等に与えられるエネルギーです。しかしながら、再生可能エネルギーは変動が大きく、エネルギー密度が希薄なので、平準化と濃縮および有効な利用法の開発が必要です。I2CNERでは、効率よく、再生可能エネルギー、特に太陽光エネルギーを電力に変換する太陽電池や、水素を中心とするエネルギーキャリアーに変換可能な水蒸気電解などの革新的な材料とプロセスの開発を行うとともに、CO2を炭素資源および水素のキャリアーと考え、CO2の有用化合物への効率的な変換プロセスについて検討を行っています。特に大気中といった希薄になったCO2についても分離可能な材料の開発に取り組んでおります。一方で、太陽エネルギーを直接、水素などに変換可能な、色素修飾やバイオ系などの革新的な光触媒についても、新しい分野融合科学の開発を検討しています。最終的には、CO2の地中貯留も必要と考えており、貯留技術や貯留されたCO2の地中での安定性などについても検討しています。このように総合的に、時間と距離のスケールの異なる技術を融合し、革新的な科学を発信することで、カーボンニュートラル社会に貢献したいと考えています。

これまで、I2CNERでは効率的な変換科学の創出を行い、カーボンニュートラルな社会の実現に取り組んできましたが、新たに高速変換というキーワードを加え、有効に利用されていないエネルギーにも着目し、分野融合で、新しい学問領域を構築していきたいと考えています。カーボンニュートラルな社会の実現を目指して、社会システム移行のシナリオ提案も含めて貢献していきたいと思っています。