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非貴金属分子触媒で水素の活性化に続く「酸素の活性化」に成功−白金フリー燃料電池の開発に応用−

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■ 概要

九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)/大学院工学研究院の小江誠司(おごうせいじ)主幹教授らの研究グループは、熊本大学の研究グループとの共同研究により、高原子価(4価)の鉄に酸素が結合した化合物の単離に成功しました。さらにその化合物が水素イオン(H)および電子と反応して水を生成することを見出しました。
本学は、これまで「水素の活性化(燃料電池のアノード反応に対応する)」技術により世界をリードしてきましたが、今回の「酸素の活性化(燃料電池のカソード反応に対応する)」技術と連結することにより、貴金属フリー分子燃料電池の開発が可能になりました。
本研究成果は、ドイツ学術雑誌『Angewandte Chemie International Edition』オンライン版で10月28日(水)に公開されました。
本研究は、文部科学省科学研究費補助金・特別推進研究「ヒドロゲナーゼと光合成の融合によるエネルギー変換サイクルの創成」の研究の一環として、九州大学の小江誠司主幹教授の研究グループが、九州大学大学院工学研究院、小分子エネルギーセンター(センター長 小江誠司)、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)(所長 ペトロス・ソフロニス)、及び福岡市産学連携交流センターで行ったものです。

 

■ 背景

鉄と酸素との反応は、生体系の多様なエネルギー変換システムの中枢機能を担っています。具体的には、酸素の運搬、酸素を用いた酸化反応、酸素から水への還元反応などを行う酵素の活性中心で、鉄は中心的な役割を果たしています。そのような化学反応において、鉄に酸素が結合した化学種の構造や性質を明らかにすることは、生体系のエネルギー変換システムを理解し、人工的に応用するために重要です。化学者はこれまでその命題に取り組み、鉄と酸素が結合した化学種を生体系から取り出し、または人工的に合成し、その構造や性質を調べてきました。しかし、これまで単核の高原子価(4価)の鉄に酸素が結合したペルオキソ種は、生体系でも人工的にも見つかっていませんでした。
鉄を含む酵素の中でも、「酸素耐性ヒドロゲナーゼ」は、水素の活性化(水素から水素イオンと電子を生成:燃料電池のアノード反応に対応)と、酸素の活性化(酸素と水素イオンおよび電子から水を生成:燃料電池のカソード反応に対応)の両方を、貴金属元素を使用せず高効率で行うため、近年の燃料電池の発展とともに注目を集めています。これまで九州大学は、酸素耐性ヒドロゲナーゼの「水素活性化の中間体」のモデルとなる鉄(2価)にヒドリドイオン(H)が結合したヒドリド化合物の単離を報告していますが(2013年2月6日付けプレスリリース参照、図1)、「酸素活性化の中間体」のモデルとなる鉄化合物は単離できていませんでした。

 

■ 内容

今回、九州大学を中心とする研究グループは、単核の高原子価(4価)の鉄に酸素が結合したペルオキソ化合物の単離に世界で初めて成功しました(図2)。X線構造解析により、鉄に酸素が2本の結合手で結ばれた(サイド−オン型)構造であることがわかりました(図3)。この化合物は、上述の酸素耐性ヒドロゲナーゼの「酸素活性化の中間体」のモデルとなる初めての鉄(4価)ペルオキソ化合物です。このペルオキソ化合物は、水素イオンおよび電子と反応して水を生成します(図4)。この反応は、燃料電池のカソード反応に対応します。

 

図1 水素の活性化(R = CH3

 

 

図2 酸素の活性化(R = CH3 or C2H5

 

図3 ニッケル(II)-鉄(IV)ペルオキソ化合物の結晶構造

 

図4 ニッケル(II)-鉄(IV)ペルオキソ化合物を用いた酸素から水への還元反応(R = CH3 or C2H5

 

■ 効果

酸素を水に還元する反応は、燃料電池のカソードで起こっている反応と同じです。本研究の成果により、酸素耐性ヒドロゲナーゼの酸素活性化メカニズムの研究だけでなく、燃料電池のカソードにおける分子レベルでの酸素還元メカニズムの研究が飛躍的に前進しました。

 

■ 今後の展開

今回の成果により、貴金属フリー分子燃料電池の開発が今後期待されます。

 

■ 論文

題目:A High-valent Fe(IV)-peroxo Core Derived from O2

著者:Takahiro Kishima, Takahiro Matsumoto, Hidetaka Nakai, Shinya Hayami, Takehiro Ohta, Seiji Ogo

雑誌名:Angewandte Chemie International Edition

DOI: 10.1002/anie.201507022R1

 

■ 掲載記事

・ 環境展望台(10月29日)

・ 朝日新聞デジタル(11月8日)