お知らせ

新規高酸素イオン伝導体「Na0.5Bi0.5TiO3(NBT)」の発見

シェアする:

九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER水素製造研究部門主任研究者/インペリアル・カレッジ・ロンドンJohn A. Kilner教授の研究グループは、『Nature Materials』のオンライン版に研究成果を発表しました。

 

■ 概要

九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)水素製造研究部門主任研究者/インペリアル・カレッジ・ロンドンのJohn A. Kilner教授の研究グループは、固体酸化物電解質燃料電池(SOFC)の低温作動化などへの応用が期待できる、新規高酸素イオン伝導体「Na0.5Bi0.5TiO3」を発見しました。
酸素イオン伝導体は、燃料電池の電解質、酸素分離膜、センサなどに応用可能な重要な機能性材料として知られています。Na0.5Bi0.5TiO3(NBT)は鉛(Pb)を含まない圧電体ですが、圧電または強磁性をもつ物質への応用において、電流が漏れることが課題でした。今回、この原因が、作製時に生じた蒼鉛(Bi)欠損と酸素(O)欠陥による酸素イオン伝導の影響であることを発見し、マグネシウム(Mg)をチタン(Ti)サイトに添加することで、600℃で0.01S/cmという大きな酸素イオン伝導を示すことを見出しました。この発見は新しい酸素イオン伝導性酸化物の設計に新しい方針を与えることを可能とし、画期的な進歩といえます。
I2CNERでは低炭素エネルギー社会の実現を目的に太陽光発電と太陽熱を利用した高温電解によるCO2を排出しない水素製造を目指しており、今回の発見は高温水電解による水素製造能力を大きく向上できる成果として、今後の展開が期待できます。
この研究成果は、2013年11月10日(日)18時(英国時間)に英国国際学術誌『Nature Materials』のオンライン版で公開されました。

 

■ 背景
現在、固体酸化物電解質燃料電池(SOFC)は高効率な発電装置として普及が始まっており、CO2の排出量の削減に寄与する発電方式として期待されています。SOFCの電解質としてはY2O3安定化ZrO2(注1)が主に使用されておりますが、酸素イオン伝導度が十分ではないことから、これに代わる新しい酸素イオン伝導体の開発が求められていました。これまでの研究では、酸化セリウム(CeO2)や酸素イオン混合伝導体およびそれを用いた酸素透過膜(LaGaO3)などがY2O3安定化ZrO2を凌駕する酸素イオン伝導性を発現することが分かっていました。しかし、これらを上回る酸素イオン伝導体の開発が課題でした。
一方、NBTはPbを含まない圧電体として、実用化が期待される材料ですが、製造法による電気的な抵抗が不規則になることが問題でした。このことから、NBTを圧電体や強磁性体として応用するには、電気的な性質の均一化が強く求められていました。

 

■ 内容
今回の研究で、Pbを含まない圧電体として広く知られているNBTについて、課題であった製造法による電気的な性質の変化が酸素イオン伝導性によるものであることを発見しました。これにより、本材料が新しい酸素イオン伝導体として応用できることを明確にしました。
図1は、NBTのペロブスカイト型といわれる構造を有する酸化物を示しており、結晶格子は、大きいイオンサイズのA サイトイオンと、小さいB サイトイオンから構成される化合物です。同じ構造の酸化物としては、LaGaO3 系の酸化物が酸素イオン伝導性を有することが知られていますが、今回、さらに優れた酸素イオン伝導度を有する化合物を見出すことができました。
図2は、新たに見出したNBT の伝導度を他の代表的な酸素イオン伝導性を有する酸化物と比較した結果を示しています。Bi の欠損とTi サイトへのMg の添加により、酸素イオン伝導性が向上し、400℃以下の低温においてはLaGaO3 系酸化物より、数倍大きな酸素イオン伝導性を発現することを見出しました。この材料における酸素イオン輸率(酸素イオンが電荷を運ぶ割合)をN2-O2 ガス濃淡電池(注2)のセルの起電力から測定したところ、図3に示すように、0.9 以上のイオン輸率を示し、新規な酸素イオン伝導体であることが分かりました。現在のところ、安価なTi やNa からなる酸素イオン伝導体は報告がなく、本研究で比較的安価な元素から構成される酸素イオン伝導体が開発できた意義は非常に高いものです。

■ 効 果
現在、酸素イオン伝導体は、Y2O3 安定化ZrO2 が主流であり、これに代わる材料としてLaGaO3
系酸化物などが使用されていますが、いずれも希土類などの希少元素が使用されており、価格や資源量などの課題があります。今回開発された材料はNa、 Bi、Ti から構成される材料であり、比較的安価な元素から構成された材料であることから、電解質の低価格化において大きな波及効果が期待されます。また、従来材料に比べて酸素イオン伝導度も高く、特に低温での伝導度が高いことから、今後、開発と普及が加速する低温作動型SOFC の研究において、大きな影響を与えることが考えられます。

 

■ 今後の展開
今回、新しい酸素イオン伝導体が見出されたことから、今後はNBTを電解質とした燃料電池への応用を検討するとともに、さらに周辺材料を探索することで、大きな酸素イオン伝導性を有する材料の発見と組成を展開します。特に、低温作動型燃料電池の電解質への利用を研究することで、従来にない400℃程度の低温で作動する燃料電池が可能になるほか、起動特性かつ長期安定性に優れたSOFC開発に役立てられます。これらが実現することにより、低炭素社会の実現に大きく寄与することが可能となり、カーボンニュートラル・エネルギーの観点で、重要な技術になることが期待できます。

 

図1 開発したNBTの結晶構造

 

図2 NBT の酸素イオン伝導度の他の代表的な酸素イオン伝導体との比較

 width=

 

図3 NBT 系酸化物のN2-O2 セルで見積もった酸素イオン輸率の温度依存性

 

 

■ 論文タイトル

Title:

A family of oxide ion conductors based on the ferroelectric perovskite Na0:5Bi0:5TiO3

 

DOI: 10.1038/nmat3782

Publication Date(online): Nov. 10, 2013

 

プレスリリースの詳細はこちら