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固体高分子形燃料電池の超高耐久化に成功!

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九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER)中嶋 直敏教授藤ヶ谷 剛彦准教授、Mohamed R. Berber特任助教(博士研究員)の研究グループは、2013年5月3日午前10時(英国現地時間)に英科学誌Nature 姉妹誌のオンラインジャーナル『Scientific Reports』に研究成果を発表しました。

 

■概 要

燃料電池はクリーンでエネルギー効率が高く、かつコンパクトであることから、車や家庭用電源への本格的導入を目指し多くの研究開発が行われています。しかし、普及には更なるコストの削減、効率や耐久性の向上が必要です。これまでの固体高分子形燃料電池(PEFC)では耐久性改善が要求されてきました。中嶋教授らの研究グループは、高分子酸でコートした加湿無しで駆動する新しいタイプの高温PEFCを開発し、これが超高耐久性を示すことを見出しました。

 

■背 景

燃料電池は2枚の電極の間を隔てる高分子膜(電解質膜)に水素イオンを流すことで発電が行われています。この水素イオンの流し方により燃料電池システム全体の構成が変わってきます。すでに市販されている燃料電池においては高分子膜に水を含ませることで水素イオンを運んでいるため、加湿器が必要です。さらに、水が沸騰する100℃以上では使用できないため冷却器も必要であり、装置コストの問題や水分管理の問題がありました。
もし100℃以上で燃料電池の発電を行うことができるならば、これらの装置が不要になるばかりか、触媒の反応効率は向上し、燃料中の不純物による触媒の不活性化が起きにくいなど低コスト化につながる多くの魅力があります。このような中/高温型PEFC では高分子膜にリン酸等の液体酸を含ませて水素イオンを流していました。しかし、液体であるためにリン酸等が漏出してしまい、务化するという問題点があり、中/高温型PEFC はごく限られた用途にしか実用化されていませんでした。

 

■内 容

研究グループでは、加湿なしで100℃以上でも発電できる中/高温型PEFC において、液体酸の漏出による务化を抑制する研究を行ってきました。そこで、液体酸に替えて高分子固体状の酸を用いました。ベースとなる高分子に固体状の酸をブレンドした膜を高分子膜として電極間に挟みました。この固体状の酸は高分子主鎖に酸基(※1)が側鎖として高密度に結合した構造をしており、隣り合う酸基でバケツリレーのように水素イオンを運搬することができます(図1)。
さらに、従来、漏出したリン酸で触媒部分においても水素イオンの運搬が行われていましたが、酸漏出を抑制したことに伴い、触媒部分にも水素イオン運搬機構を導入する必要が生じました。そこで、研究グループが進めている「ボトムアップナノ集積法(※2)」により、高分子化した酸を新たにナノ積層した新規電極触媒を開発しました。
これら高分子膜と新たに開発した電極触媒とを組み合わせることで、液体酸の流れに頼ることなく水素イオンを電極間に流して発電する中/高温型PEFC の開発に成功しました。

 

■効 果

耐久性試験の結果、高分子化酸を用いることで、燃料電池の寿命が飛躍的に向上することが明らかとなりました(図2)。電池の長寿命化は低コスト化と同じ効果があるため、結果的に低コスト化が実現できたことになります。
中/高温型にすることで、燃料電池システムのうち冷却器や加湿器にかかるコスト分で10%のコスト削減が可能です。また、水素もこれまでのような純度を必要とせず、白金以外の金属も触媒活性を示すことから、様々な面において低コスト化可能な技術と言えます。
さらに、これまで中/高温型PEFC の弱点であった室温付における発電も実現できました。これにより、現在市販されている燃料電池の代替も十分可能と考えられます。

 

■今後の展開

発電可能温度を250℃まで拡張する検証を進めています。更なる高温発電により、直接都市ガスから発電することも可能になり、改質器も不要になります。本技術における特長の一つである「ボトムアップナノ集積法」で作製する触媒構造の利点を活かして、低白金化を進めています。さらに触媒活性を高めるナノ構造を作製することで、白金量を現在の20 分の1 程度にできると見込んでいます。

 

プレスリリースの詳細 

 

■論 文

Title:

Remarkably Durable High Temperature Polymer Electrolyte Fuel Cell Based on Poly(vinylphosphonic acid)-doped Polybenzimidazole

 

Authors: Mohamed R. Berber, Tsuyohiko Fujigaya, Naotoshi Nakashima

 

DOI: 10.1038/srep01764

 

Article published online: 3 MAY 2013

 

■報道記事

◇  Nature Asia 注目の論文

◇ 日本経済新聞電子版

◇ 読売新聞電子版

◇ 共同通信

◇ 四国新聞電子版

◇ 静岡新聞電子版

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