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安価で高性能な水素貯蔵合金 (FeTi) の開発に成功!

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九州大学大学院工学研究院、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER) 水素貯蔵部門堀田善治主幹教授秋葉悦男教授らの研究グループは、水素貯蔵合金(※1)として知られる鉄チタン(FeTi) 合金を、容易にかつ安価で利用できる新たな製造技術を開発しました。
FeTi合金は、高価な希土類元素を含む水素貯蔵合金と違い、安価で資源的に豊富な鉄とチタンのみでできた合金です。FeTi合金にひずみを与えて大量の格子欠陥(※2)を導入することで、煩雑な活性化処理をすることなく繰り返し活用することが可能となりました。また、これまでFeTi合金の普及を妨げていた活性化処理に必要な高温・高圧に耐える設備が不要となるため、材料費や設備費の両面から水素貯蔵材料設備の大幅なコスト削減が見込まれます。今回の技術開発により、水素を利用したエネルギーの有効な貯蔵および活用手段としての貢献が期待されます。
本研究成果は、2013年3月7日(木)(米国現地時間)、米国Elsevier社の科学雑誌『International Journal of Hydrogen Energy』誌オンライン版に掲載されました。

 

■背 景

水素貯蔵合金として一般的にLaNi5、Mg2Ni,、FeTiなどの合金が知られています。LaNi5は室温で利用できて性能は優れていますがLa(ランタン)という希土類元素を含んでいることから極めて高価で資源的にも課題があります。Mg2Niは軽量で安価ですが、200℃以上の高温でないと利用できず、現実的な利用は困難です。FeTi合金は身近な金属元素で最も安価ではありますが水素貯蔵合金として活用するには、使用前に圧力を30気圧に設定し、かつ、450℃という高温の環境下で活性化処理を行う必要がありました。また、一旦大気中に曝した後は、再度高い水素圧力と高温下での活性化処理が必要であるなど、使用前処理が煩雑であることからほとんど普及していません。いずれも水素貯蔵合金として優れた特長を有しますが、それぞれ解決すべき問題を抱えています。今回の研究では最も安価なFeTi合金に対して活性化処理を要しない合金にすることを目標に研究開発を行いました。 

 

■内 容

FeTi合金は鉄とチタンが規則的に配列した金属間化合物(※3)(B2構造(※4))であり、極めて強度が高く脆いために塑性変形しにくい材料です。この合金を巨大ひずみ加工(※5)装置で強制的に変形させ大量ひずみを付与することで、転位、結晶粒界などの格子欠陥を導入することができました。このような大量格子欠陥を含むFeTi合金は、水素吸蔵・脱蔵を繰返した後に大気中に曝しても、改めて活性化処理することなく再度利用できることを明らかにしました。これは、従来の水素貯蔵合金は活性化後、一旦大気に触れると活性を失うことから考えて、従来の水素貯蔵合金とは全く異なる実用面から見て極めて好ましい性質がFeTiに付与されたことになります。

 

■効 果

(1) FeTi合金は、Laのような高価かつ資源的に課題のある希土類元素を含む水素貯蔵合金と違って、安価な鉄とチタンのみでできた合金であることから、材料費の大幅な削減が可能です。

(2) 使用前に、30気圧の圧力のもと450℃という高温での活性化処理を必要とせず、設備費としてのコスト削減も可能です。

(3) 水素吸蔵・脱蔵を繰返した後でも劣化することなく、再度活性化処理せずに使用可能です。このため取扱いが極めて容易です。

(4) 活性化後、大気に触れても活性を失うことなく、そのまま使用可能となります。これは、従来の水素貯蔵合金に関する常識を覆す性質を付与したことになります。このため水素貯蔵合金の取扱いが極めて容易となりました。

(5) 安価なFeTi合金を利用しやすくすることで、水素を利用したエネルギーの有効な貯蔵や活用が期待され、日本のみならず世界が直面するエネルギー有効利用に大きく貢献できます。 

 

 

■今後の展開

FeTi合金への大量格子欠陥の導入は巨大ひずみ加工法で行いましたが、投入ひずみ量の影響や、活性化処理が不要となったそのメカニズムの解明など系統的な実験を行います。また、一般的な圧延技術などの加工プロセスを行うための研究開発を進め、大量生産性への指針を構築します。

本開発技術に関する特許申請を行うとともに、興味を示す企業との連携で、実用化を図ります。

 

■用語解説

(※1) 水素貯蔵合金

水素は一般に気体でありボンベに貯蔵するのが一般的ですが、保管に要する容器や体積が大きくなるため、金属中に水素化物として貯蔵する方法があります。この方法では、大気圧付近で圧力を上下することで大量の水素の出し入れができる合金が開発されています。LaNi₅、Mg₂NI、FeTiなどの合金は水素を液体水素や固体水素として保存する場合よりも高密度(コンパクト)に保存できます。

(※2) 格子欠陥

金属や合金は一般に規則的に原子が配列した結晶状態ですが、変形すると原子が存在しない点欠陥(空孔)、原子面が抜けた時にできる線欠陥(転位)、原子配列方向が異なる領域が交わった結晶粒界(面欠陥)を形成します。大量に加工した時に、このような欠陥も大量にできることになります。

(※3) 金属間化合物

異種原子が規則的に並んだ状態です。

(※4) B2構造

体心立方構造をベースに、単位胞格子の体心の位置と角の位置で2つの異種原子が交互に並んだ金属間化合物です。

 

(※5) 巨大ひずみ加工

試料を拘束条件下で加工する方法で、変形しても断面積が変化しないことから繰返し加工が可能であり大量の塑性ひずみが導入できます。

 

 

■論 文

Title: High-pressure torsion of TiFe intermetallics for activation of hydrogen storage at room temperature with heterogeneous nanostructure

 

Authors:  Kaveh Edalati, Junko Matsuda, Hideaki Iwaoka, Shoichi Toh, Etsuo Akiba, Zenji Horita

 

Article first published online: 7 MAR 2013

 

 

■報道記事

◇ 日本経済新聞電子版

◇ Yahoo Japan! ニュース

◇ SJNニュース 再生可能エネルギー最新情報

◇ OPTRONICS Webジャーナル 

◇ Nanotech Japan

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