小江誠司(おごうせいじ)教授(I2CNER先端物質変換研究部門長)の論文がアメリカ科学振興協会によって発行されている『Science』誌に掲載されました。
小江教授の研究グループは、国立大学法人九州大学(総長 有川節夫、以下「九州大学」という)、一般財団法人総合科学研究機構、国立大学法人茨城大学の共同研究により、自然界に存在する水素活性化酵素「ニッケル-鉄ヒドロゲナーゼ」をモデル(模範)として、同様の働きをする新しいニッケル-鉄触媒を開発しました。そして、この触媒を用いて、常温常圧で水素から電子が取り出せることを示しました。これまで、自然界の酵素をモデルとすることで、安全・高性能・低コストな人工触媒の開発が多く試みられてきました。これまでの、最良の機能モデルは、2007年に九州大学の同研究グループが開発したもので、「鉄」ではなく貴金属である「ルテニウム」を使用したニッケル-ルテニウム触媒でした。今回、ルテニウム(240円/g)の代わりに、約1/4000の価格の鉄(0.06円/g)を使用した系での水素の活性化に初めて成功し、学術的な価値だけでなく、今後の燃料電池用の触媒などへの応用を考えると画期的な進歩といえます。
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<論文タイトル>
A Functional [NiFe]Hydrogenase Mimic That Catalyzes Electron and Hydride Transfer from H₂
DOI: 10.1126/science.1231345