研究成果

【プレスリリース】隕石衝突の極限状態を「高圧ねじり」手法によって再現 ~生命誕生の謎を解くRNA前生物化学への示唆~

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Edalati Kaveh准教授(エネルギー変換科学ユニット)、Nguyen Thanh Tam学術研究員(三井化学カーボンニュートラル研究センター)らの研究グループは、隕石衝突の極限環境を再現する「高圧ねじり(HPT)」手法を用い、生命の起源物質であるRNA前駆体(アデノシン一リン酸(AMP)の振る舞いを世界で初めて解明しました。
本成果の意義は、初期地球におけるRNAの前生物化学進化において、隕石衝突が「合成」だけでなく「分解」と「再編成」という複雑な化学プロセスを駆動した可能性を実験的に示した点にあります。また、重合が進行しなかったという結果から、RNAのような複雑な生体高分子の出現には、高圧・高せん断の力学的ストレスに加えて、鉱物触媒や紫外線照射などの環境的・触媒的因子の関与が不可欠であったことが示唆されます。本研究は、地球外物質衝突という極端な物理環境が前生物化学に果たした役割を、新しい手法で検証するための重要な基盤を提供するものです。生命の起源という科学的な謎を解き明かす上で、力学的作用と化学反応の相互作用を考慮した新たな視点を切り開きます。

本研究成果は、学術誌Astrobiology」(2026年1月10日付)に公開されました。

プレスリリース本文は九州大学HPよりご覧いただけます。

【論文情報】
掲載誌:Astrobiology
タイトル:High-Pressure Torsion-Induced Transformation of Adenosine Monophosphate: Insights into Prebiotic Chemistry of RNA by Astronomical Impacts
著者名:Jacqueline Hidalgo-Jiménez
DOI:10.1177/15311074251412318

関連リンク
高圧ねじり(HPT)法による隕石衝突模擬実験の概念図:彗星や隕石などの小天体衝突が初期地球にもたらす高圧・高せん断の極限環境を、HPT装置で再現し、RNAの構成単位となるヌクレオチド(AMP、UMP、GMP、CMP)の化学反応と安定性を調査する。本手法により、天文イベントが前生物化学、特に生命の起源に不可欠な分子であるRNAの形成にどのような影響を与えたかを解明する。