研究成果

【プレスリリース】発光技術と医療をつなぐ次世代有機材料を開発

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九州大学大学院工学研究院の安達千波矢教授、千歳洋平助教、国立台北科技大学の林家弘教授らの研究グループは、近赤外レーザーによって光る新しい有機分子を開発し、それを有機EL(OLED)としても高効率に発光させることに成功しました。今回開発された分子は、「熱活性化遅延蛍光(TADF)」と、近赤外レーザーによって効率的に励起される「2光子吸収」という、通常は両立が難しい2つの光機能を単一分子内で実現した点で、非常に画期的です。これらの特性は従来、個別に研究されてきましたが、本研究では分子設計により両者を高度に両立させ、その発現メカニズムを理論計算と実験の両面から明らかにしました。両機能を同時に発現しつつ、応用展開まで示した例は世界的にもほとんど例がありません。

今回開発した分子は、700~900 nmの近赤外光を2光子で吸収し、明るい可視光発光を示します。また、有機EL材料として用いた場合でも、外部量子効率13.5%という優れた性能を示しました。これにより、従来は用途ごとに個別に設計されていた材料を、1つの分子で多機能的に活用できる可能性が拓かれ、材料設計の効率化やコスト削減にも大きく貢献すると期待されます。さらにこの材料は、金属を一切含まない純粋な有機分子で構成されており、細胞毒性が低く、生体適合性にも優れています。そのため、近年注目されている医療用蛍光プローブやがんの高精度診断といった応用にも適しており、今後の医療現場での活用が期待されます。

本研究成果は、国際学術誌「Advanced Materials」に2025年7月30日(水)午前7時(日本時間)までに公開されました。

プレスリリース本文は九州大学九州大学HPよりご覧いただけます。

【論文情報】
掲載誌:Advanced Materials
タイトル:Unlocking Dual Functionality in Triazine-Based Emitters: Synergistic Enhancement of Two-Photon Absorption and TADF-OLED Performance with Electron-Withdrawing Substituents
著者名:Youhei Chitose,* Gomathi Vinayakam Mageswari, Ryota Zenke, Toshiharu Ide, Shintaro Kohata, Ja-Hon Lin,* Tzu-Chau Lin,* Youichi Tsuchiya, and Chihaya Adachi*
DOI:10.1002/adma.202509857

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