研究成果

【プレスリリース】薄膜中の希土類錯体の発光機構を解明し、高効率・強発光を達成

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発光性希土類金属錯体は色鮮やかな発光を示すことから、色再現度の高いディスプレイや視認性の高いセンサーなどを実現するための発光材料として期待されています。多くの実用的な発光デバイスは薄膜状であることから、その実現のためには薄膜中における希土類錯体の高効率・強発光を達成することが重要となります。しかし、このような状態における希土類錯体の発光機構が未解明であることが開発のボトルネックとなっていました。
今回、合志憲一助教、安達千波矢教授(工学研究院/I2CNERエネルギー変換科学ユニット)らの研究グループは、三価ユウロピウム(Eu(III))錯体を用いた薄膜における発光過程を1兆分の1秒の時間分解能で逐次解析することによって、その機構を詳細に解明しました。さらにその機構に基づき、薄膜内の光エネルギー移動効率100%、錯体単体と比較した発光強度400倍を達成することに成功しました。
今回明らかにした薄膜中における発光機構およびそれに基づいた材料設計によって、希土類錯体を用いた新たな高効率発光デバイスを戦略的に開発できるようになることが期待されます。
本研究成果は、2023年5月29日に英国Royal Society of Chemistryの国際学術誌「Chemical Science」にオンライン掲載されました。

プレスリリース本文は九州大学HPよりご覧いただけます。

掲載誌:Chemical Science
タイトル:Highly efficient light harvesting of a Eu(iii) complex in a host–guest film by triplet sensitization
著者名:Shiori Miyazaki, Kenichi Goushi, Yuichi Kitagawa, Yasuchika Hasegawa, Chihaya Adachi, Kiyoshi Miyata and Ken Onda
DOI:https://doi.org/10.1039/D3SC01817B

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光吸収能の高い薄膜を用い、効率の良いエネルギー移動を起こさせることによって、錯体単体に比べ約400倍の強発光を達成した。