概要

研究目標

カーボンニュートラル・エネルギー社会へのシフトは世界的に取り組まなければならない重要な課題です。I²CNERは必要な革新的科学と分野融合による新しい学問領域を開拓して、社会の脱化石資源化に貢献します。それと同時に、エネルギー価格が高騰している現在、豊かな生活を支えるエネルギーの確保は、世界的に重要な課題です。I²CNERでは再生可能エネルギーを水素またはCO2から得た炭化水素へ変換利用する社会システムを提案し、カーボンニュートラル社会の構築に寄与したいと考えています。

総長メッセージ

カーボンニュートラル・エネルギー社会実現に向けて

九州大学総長
石橋達朗

次世代に対して環境に優しいエネルギーを持続的に供給するために、CO2排出を伴わない再生可能エネルギーを使用するグリーンイノベーションが求められています。2020年(令和2年)10月、日本政府は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。

九州大学では、カーボンニュートラル・エネルギー社会の実現を目指し、本学の強みである環境・エネルギー科学研究を包括的に推進してきました。そして2010年(平成22年)121日には文科省「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI))」の採択を受けて、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)を設置しました。

I2CNERは、その後の10年間で、日本と世界のエネルギー問題の解決に向けて基礎研究に取り組み、国際ネットワークの構築と海外主任研究者を構成メンバーとした国際協働体制を実現し、WPI基準 (“world premier” status) に到達したと評価され、2020年(令和2年)4月、WPIアカデミー拠点に採択されました。

現在は、これまでに築いた国際ネットワークを基に、戦略的パートナー大学(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、マサチューセッツ工科大学、インペリアルカレッジ・ロンドン、スイス連邦工科大学、エディンバラ大学)との連携の強化、国際ネットワークの充実、若手・外国人・女性研究者などの多様な研究者の積極的な雇用、国際頭脳循環の加速を通して、カーボンニュートラル・エネルギーに資する最先端の基礎研究を展開しています。

また、I2CNERがサテライト機関を置くイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校とは、九州大学も戦略的パートナーシップを締結しており、エネルギー分野以外の共同研究も推進しています。2024年(令和6年)2月には、この2校に国立台湾大学を加え3大学による連携センター設置のための覚書を締結し、教育・研究における交流を推進し、パートナーシップの一層の強化を図っています。

今後とも九州大学は、国際協同に基づくカーボンニュートラル社会の実現に向けて、エネルギー科学の優れた研究成果の創出やトップレベルの研究者育成に総力を挙げて取り組みます。

所長メッセージ

カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER:アイスナー)のウェブサイトへようこそ。

カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所長
石原 達己

カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)は、2010年にWPI(World Premier International Research Center Initiative)拠点採択に伴い、「カーボンニュートラル・エネルギー」という名を冠した当時唯一の研究所として設立され、2020年にWPIアカデミーに移行しました。この間、WPIのミッションである次代を先導する価値創造として、基礎研究の社会的意義・価値向上を推進してきました。

現在の地球温暖化などの環境変動問題は深刻さを増しており、再生可能エネルギーに立脚するカーボンニュートラル社会への移行が、世界的に取り組むべき重要な課題となっています。化石燃料を中心に使用する現在の社会から、再生可能エネルギーに立脚した社会への移行は、依然として多くの課題があり、革新的なエネルギー変換技術のみでなく、物質とエネルギーが連携した利用体系の構築が必要で、総合的な社会システムの設計が求められています。

太陽光発電や風力といった再生可能エネルギーは、地域偏析のない、広く平等なエネルギーであり、地球上のすべての人に平等に与えられるエネルギーです。しかしながら、再生可能エネルギーは変動が大きく、エネルギー密度が希薄なので、平準化と濃縮および有効な利用法の開発が必要です。I²CNERでは、効率よく再生可能エネルギー、特に太陽光エネルギーを電力に変換する太陽電池や、水素を中心とするエネルギーキャリアに変換可能な水蒸気電解などの革新的な材料とプロセスの開発を行っています。また、CO₂を炭素資源および水素のキャリアと考え、CO₂の有用化合物への効率的な変換プロセスについても研究しており、特に大気中で希薄になったCO₂についても分離可能な材料の開発に取り組んでいます。一方で、太陽エネルギーを直接水素などに変換可能な、色素修飾やバイオ系などの革新的な光触媒についても、新しい分野融合科学を展開しています。最終的には、CO₂の地中貯留も必要であるため、貯留技術や貯留されたCO₂の地中での安定性などについても検討しています。このように総合的に、時間と距離のスケールの異なる技術を融合し、革新的な科学を発信することで、カーボンニュートラル社会の創出に貢献したいと考えています。

これまで、 I²CNERでは効率的な変換科学の創出を行い、カーボンニュートラルな社会の実現に取り組んできましたが、新たに高速変換というキーワードを加え、有効に利用されていないエネルギーにも着目し、分野融合で、新しい学問領域を構築しています。WPI拠点として培った基礎研究を社会実装につなげて、カーボンニュートラルな社会の実現を目指し、社会システム移行のシナリオ提案も含めて貢献します。