地球温暖化防止の新たな枠組みである「パリ協定」では、産業革命以降の世界全体の平均気温上昇が2℃を下回る水準にとどめることが目標とされています。しかしながら、この目標はCO2の排出削減努力のみによって達成することはもはや困難とされ、数10億トン以上の規模で大気中からCO2回収(ネガティブエミッション)が必要とされています。これに併せ、安倍晋三首相の提唱で発足し、日本政府主導の国際会議であるInnovation for Cool Earth Forum(ICEF)ででも、ネガティブカーボンエミッション実現に不可欠な”Direct Air Capture(大気中CO2の直接回収)”に関するロードマップが報告されています。 今回発表された論文では、世界最高性能のCO2透過量を示すナノメートル厚の自立性分離膜作製に成功したことを報告しております。またこの極めて高いCO2透過性能に活かし、大気中のCO2濃度に近い、極低濃度(1000ppm)のCO2を含むCO2/N2混合ガスから、常圧下でのCO2膜分離を世界で初めて成功しました。膜分離は、必要設置面積、エネルギーやサイズのスケーラビリティなどにおいて、他のCO2回収技術より、安価で高い柔軟性を持つため、様々なシーンでのCO2回収が可能となります。
この世界最高性能のCO2透過性を持つ分離膜を用いれば、「どこでも(Ubiquitous)」, 「温和な条件(Ambient)]」でDirect Air Captureが可能となり、ネガティブカーボンエミッション社会を構築への貢献が期待されます。