設立の背景

(1)冷媒と環境問題
冷凍機やヒートポンプの作動媒体として用いられるフロン系冷媒は、オゾン層破壊の一つの要因としてモントリオール議定書で規制が進み、CFCやHCFCなどの特定フロンに代わる代替フロン物質としてHFCが開発されました。しかしながら、地球温暖化係数 (Global Warming Potential: GWP)が大きく、現在では地球温暖化への影響が危惧されています。この対策として、新たな次世代冷媒として、次々と新物質(主としては混合冷媒)が提案されていますが、全ての条件を満足できる次世代冷媒は未だ見つかっていません。冷凍空調産業の発展を考えても、また、地球環境問題の解決を考えても、地球に優しい次世代冷媒を探し出すことが、我々の将来の安心した生活を考える上で重要であることに違いありません。
(2)NEXT-RP設立の経緯
文部科学省事業の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)により設置された九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)においては、WPIのミッションである「世界最高レベルの研究水準」「国際的な研究環境の実現」「研究組織の改革」「融合領域の創出」を実現するために、温室効果ガス排出量の削減および非化石燃料によるエネルギーシステムを構築するための基礎科学に関して、これまでに先進的取り組みを行ってきました。この度、I2CNERのミッションを達成するための一手段として、平成28年4月1日付けで I2CNERの組織の中に、附属次世代冷媒物性評価研究センター(Research Center for Next Generation Refrigerant Properties:NEXT-RP)を設置いたしました。
(3)NEXT-RPのミッション
1)地球規模の環境問題及びエネルギー資源枯渇問題の解決への貢献
2)我が国の空調冷凍及びエネルギー有効利用における先導的高度基盤技術の構築   
3)温暖化に関与しない環境調和型高効率次世代エネルギーシステム研究開発を支える知的基盤の提供
の3つの目的をもって、我が国の次世代冷媒基盤研究拠点として、国内外の研究機関を組織化し、ゼロODP(ODP:オゾン層破壊係数)・ 低GWPの環境負荷の小さい新規冷媒の熱物性、熱交換特性、およびサイクル基本性能に関する基盤研究を開始いたします。

 

 

3つの主要研究部門

(1)冷媒の熱力学性質および輸送性質計測部
冷媒の熱力学性質および輸送性質は、機器開発においても、システム設計においても、初期の段階から必要不可欠な基盤情報です。さらに、これらの熱物性情報は、高い信頼性と、ユーザーフレンドリーな利用環境を備えていることも大切です。本部門では、次世代冷媒の熱物性(熱力学性質および輸送性質)を高精度に実測し、測定結果に基づいて、信頼できる状態式や相関式を作成し、利用しやすい形でユーザーに提供します。
(2)ヒートポンプの伝熱特性およびサイクル性能評価部門
次世代冷媒を冷凍機やヒートポンプに適用するためには、純冷媒および混合冷媒に関する伝熱特性の解明と、サイクル性能を評価する必要があります。本部門では、様々な種類の熱交換器を用いて、凝縮熱伝達、蒸発熱伝達などの実験を行い、設計に有益となる伝熱特性データを取得するとともに、熱交換器のサイクル性能に及ぼす影響を明らかにします。また、得られたデータは、データベースとしてまとめ、利用しやすい形でユーザーに提供します。
(3)冷媒物性データベース作成および国際連携推進部門
上述した2つの部門の成果は、データベース化し、世界標準値として利用しやすいソフトウエアとして提供する必要があります。そのためには、状態式やデータベースの作成段階から、世界中で同時に議論しながら作業を進め、ソフトウエア自体の世界標準化を目指さなければいけません。本部門では、日本国内の研究者だけでなく、海外の研究者も取り込んだ国際連携組織を構築して、物性評価の標準化を進めます。


NEXT-RP 連携組織体制図(2017年9月現在)