Research

研究紹介

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  1. 大気中から直接CO₂回収を可能とする
    分離ナノ膜の開発

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    自立性を持つ巨大ナノ膜
    -膜厚: 数百nm(100~300nm), 直径:数cm-

    人間社会は、化石資源を採掘して消費し、最終的にCO₂として大気に放出するという、炭素の一方向移動によって支えられてきました。その結果、大気にCO₂が蓄積し、地球温暖化やそれに伴う気候変動問題が生じております。これらの問題解決のためには、Direct-Air-Captureと呼ばれる、大気から炭素(CO₂)を戻す技術が不可欠です。特に、場所を選ばずに大気から直接CO₂を回収する(ユビキタスCO₂回収)という、新しい概念が重要となります。
    この新しいコンセプトを実現するため、我々は大気からCO₂回収を可能とする、分離膜の開発を進めています。特に我々が注力しているのは、厚みがナノメートルオーダーであるにも関わらず自立性をもち、さらに膜の平面サイズが膜厚に対して十分大きい、巨大なナノ膜です。この膜は、厚み方向はナノサイズに由来するユニークな特徴を示しますが、平面サイズは手でも持てるほどあります。つまり、「手で操作できるナノ材料」と言えるでしょう。このユニークなナノ膜技術を使って、厚みが約30nmという極めて薄い分離膜を作製し、CO₂を選択的に透過させることに成功しております。またこの膜は、これまで世界で報告されているCO₂透過性よりも20倍以上というダントツに高いCO₂透過性を示しております。この高い透過性により、これまでは不可能とされてきた分離膜によるDirect Air Capture(membrane-based Direct Air Capture)の実現性が高まり、ユビキタスCO₂回収の第一歩を踏み出しております。

  2. 光を捕集する
    大面積光捕集界面の創製

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    シリコン基板上に配列した銀ナノ粒子アレイの電子顕微鏡写真

    太陽光は、空から降り注ぐエネルギー源であり、地上ではどこでも入手可能な「ユビキタスエネルギー」と言えるでしょう。この太陽光をいかに効率的に捕集するか、これが我々の目指すもう一つ方向性です。
    我々はありふれた物質の表面構造やそのサイズをナノメートルレベルで精密に制御し、特徴的な光応答性を示す、大面積の表面ナノ構造作製に関する研究を進めています。ナノのユニークな特性を、実世界で利用するため、我々は、設計されたナノ構造を大面積で作製する、ということもだと考えています。
    これまで、様々なナノ構造を大面積で作製してきました。例えば、光を捕集するナノフィンアレイや、円筒ナノピラーアレイなどがあります。最近では、貴金属ナノ粒子の局在型プラズモン共鳴と呼ばれる、ユニークな光応答性に注目し、この貴金属ナノ粒子の大面積2次元アレイの作製とその応用についても研究を進めています。特に数nmの間隔で配置された貴金属ナノ粒子ペアに光を照射した場合、それによって各粒子で生じるプラズモン共鳴が相互作用し、その粒子間に極めて強い増強電場が形成されます。この増強電場内えは、分子の超高好感度センシングや二光子吸収など、通常の光照射では起こらないような反応などが実現されます。最近は、この貴金属ナノ粒子の2次元アレイと分子システムを組み合わせた新しい光変換界面の創製に関する共同研究を進めています。

  3. ナノ剣山を活用する
    新しい機能性界面の設計

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    我々は規則的な3次元ナノ空間の設計についても興味をもって研究を進めています。最近は、シリコンナノワイヤーが垂直に林立したナノ剣山構造について注目しています。具体的には幅が数十nm以下、長さが数マイクロメートル以上のナノワイヤーが、数十nm間隔で密集直立した構造に焦点を当てています。このようにワイヤーを立てることでワイヤー間に空間が形成されます。この隙間は数十nmしかないナノ空間とみなすことができます。近年、マイクロ・ナノリアクターと呼ばれる、微小な空間内での化学反応が注目されていますが、このシリコンナノ剣山間隙も、反応空間になります。さらに、ナノ剣山表面に触媒ナノ粒子を修飾すれば、反応空間内に触媒粒子が3次元的に固定化されることとなります。この「ナノ反応空間」と「触媒ナノ粒子の3次元配置」という特徴を活かし、様々な有機反応の高効率で行う、有機変換システムを実現しています。
    またこの剣山構造は光を反射しない「無反射基板」でもあり、入射した光を漏れなく利用可能となります。これについても、新しい光機能性界面として、共同研究を進めています。

  4. 複合ナノ膜

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    3層構造からなる複合分離ナノ膜図

    人為的な気候変動の最も大きな原因は、大気中に温室効果ガスを継続的に排出していることです。現在、発電所からは大量のCO₂が排出されており、ここが主なCO₂排出源となっています。現在、膜分離は、排ガスからCO₂を分離するための有望な技術と考えられています。特に、火力発電所でのCO₂回収のためには、CO₂と窒素を分離する必要があります。私たちの研究室では、選択的な膜の薄膜化と膜の表面改質というアプローチを用いて、優れた分離性能を持つ新しい膜を開発しています。現在、大規模なガス分離に向けたチャレンジングな目標を達成するために、新しい膜の研究を行っています。