研究内容

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はじめに

「環境・エネルギー電気化学」をキーワードとして、イオン伝導性固体材料、特にプロトン伝導性固体材料を基軸とした機能性材料の開発とその応用研究に取り組んでいます。環境浄化、脱石油、低エネルギー社会の実現といった、環境をよくする技術に、固体電気化学の立場から貢献できる研究を展開します。

プロトン伝導性酸化物を用いた水素エネルギーデバイス

img_01 水素の陽イオンであるプロトンを伝導種とする固体材料には、水素エネルギーに関わる様々な応用が考えられます。燃料電池発電、電気分解による水素製造、水素の電気化学的分離、水素検知など、水素社会の実現(図1)に有用なデバイスの技術開発を行っています。

プロトン伝導体を用いた水蒸気電解の原理を図2に示します。外部電源により電気を流すと、左の電極室(アノード)において水から水素がプロトンの形で引き離され、右側の電極室(カソード)において水素として分離されます。電極過電圧や電解質の抵抗を抑えることでエネルギー効率をいかに高くするかがポイントです。これまでに、電極材料の改良と電解質の薄膜化により、600℃での作動時に、エネルギー効率90%(HHV)を超える高効率水蒸気電解の実験に成功しています。また、酸化物の薄膜化技術を用いた高効率燃料電池の開発にも取り組んでおり、600℃程度の中温領域において高効率作動が可能であることを示しました(図3)。また、混合ガスから水素のみを選択的に分離する電気化学的水素ポンプや水素分離セラミック膜の研究を行っています。

図2 水蒸気電解の模式図

図2 水蒸気電解の模式図

図3プロトン伝導体燃料電池の発電試験

図3プロトン伝導体燃料電池の発電試験

新しいイオン伝導性固体の開発

性能の高い電気化学デバイスの構築のためには、性能の高い固体電解質、安定性や強度の高い実用的な材料が求められます。岩原らにより1981年、日本から誕生したプロトン伝導性ペロブスカイトを出発点として、新しい材料の開発に挑戦しています。
イオン伝導性はこれまで、もっぱらバルク的性質として扱われ、その材料設計が行われてきました(すなわち、電荷担体としての格子欠陥の導入)。しかし、近年、界面における特異なイオン伝導特性の報告が増えており、「ナノイオニクス」として次第に注目されています。われわれは、金属ナノ粒子を分散したプロトン伝導性酸化物に、ナノイオニクス効果による新しいイオン物性-導電率が数桁増えたり減ったりする現象を発見しました(図4では(b)に示すように、ナノサイズの白金の分散によって導電率が3桁以上、減少しています)。また、酸化物粒子をナノサイズ化し、界面を増加させることによる新しいイオン伝導体の創製にも取り組んでおり、これまでにナノチタニア粒子を用いたプロトン伝導体を開発しました(図5)。このほか、プロトンと電子の混合伝導性を有する材料の開発を行っています。

図4白金分散ペロブスカイトに見られる導電率の変化

図4白金分散ペロブスカイトに見られる導電率の変化

図5ナノチタニア系新規プロトン伝導体

図5ナノチタニア系新規プロトン伝導体

固体イオニクスに関連した新現象・学理の探求

有用な材料は、既存の材料の延長線上とは全く違う別なところに存在しているかもしれません。例えば、我々は、プロトン伝導性酸化物に特有のナノイオニクス現象を見いだし、固体中のイオン伝導性が界面の利用により制御できる可能性を示しました。新しいイオン伝導性の発現機構燃料電池等への応用を念頭に、固体のイオニクスに潜む新しい現象、材料開発指針につながるような学理の探求を目指して研究を行っています。

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