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CO2分離・転換研究部門

研究内容

 

目的

本部門の研究目的は、a)発電や工業プロセスで用いる高効率なCO2分離材料の開発、b)回収したCO2を液体燃料やその中間体といった有用物質に高効率で変換するプロセスの開発・構築です。CO2分離では、石炭ガス化複合発電(IGCC)の燃焼前ガス処理、発電所や他の産業における燃焼後排ガス処理、そして天然ガス田でのガス精製過程をターゲットとして、これらプロセスで用いるCO2分離膜の開発を目指します。従来の膜技術は、実用レベルに達するガス選択性があるものの、ガス透過性の少なさが課題となっています。これを解決するためには分離膜の薄膜化が有効ですが、現在の分離膜は数ミクロン程度の膜厚にとどまっています。そこで本部門では、高効率なCO2分離に向けて、分離膜の超薄膜化と分離膜材料開発を主要目標としています。

またCO2は重要な炭素資源でもあります。そこで本部門では、再生可能エネルギーを用いて、回収されたCO2を電気化学的に物質転換し、CO2排出量削減を目指します。具体的には、再生可能なエネルギーから作られた電気エネルギーを使い、CO2をCO、メタン、メタノール、エタノールやエチレンなどの有用物質へと電気化学的に転換(還元)する電極、触媒及びそれらのプロセス構築を目指しています。現在は、電極触媒に添加する貴金属(典型的には銀や金)量の低減(あるいは削減)化、あるいはエチレンやエタノールのような多炭素化合物へと変換するための銅触媒の開発、さらには電解質、ガス拡散電極(安定性、触媒層の最適化、多孔性)の設計と最適化などの研究に注力しています。

 

ロードマップ


研究ハイライト

2012年度は、当部門は研究領域を再検討し、それについてエネルギーアナリシス部門からの助言を踏まえ、将来性のあるCO2の回収・分離、および転換技術を重点項目とした。主な科学的・技術的な課題は以下のとおりである。

 

 

CO2分離・濃縮 

二酸化炭素分離に要する費用は、二酸化炭素回収・貯留(CCS)の全プロセスにおいて最も大きな割合を占める。従来の二酸化炭素回収技術である溶液吸収法は、研究が進み、現在最も利用可能なCCS技術として受け入れられている。しかしながら、吸収液からの二酸化炭素回収に更なるエネルギーが必要となり、回収コストが増加する。表1には、二酸化炭素回収技術に要する現在のコストおよび目標とするコストを示す。

上記表によれば、溶液吸収法が最もコスト効果の高いものではなく、それを代替しうる、全く異なる分離技術が必要である。膜分離および吸着法は、低コストで効率的な二酸化炭素回収プロセスを実現するために大きな可能性を秘めた有望な候補である。そこで膜分離および吸着法の利点を把握し、それを最大限活用するために、燃焼前CO2分離プロセスや液体天然ガス抽出時に放出される高圧ガスからのCO2分離を目標とすることとした。

二酸化炭素の膜分離技術における最先端性能を踏まえ、また水素は貴重なエネルギー担体であることを考慮し、二酸化炭素と水素の高圧混合ガスを、分離発生源ガスとして重要目標とした。このような混合ガスは通常石炭ガス化複合発電(IGCC)所から排出される。膜分離はこのような工業的側面だけでなく、科学的にも重要な研究要素を含んでいる。なぜなら、二酸化炭素分子は水素よりも大きいことから、従来のガス分子のサイズによる分離・回収では分離できない。また膜分離には、相反問題がある。具体的には、より選択的なガス分離はガス透過性を低下させ、逆に透過性を上げると選択性が下がるという問題である。この問題に取り組むべく、当部門では薄膜材料を設計し、さらに膜厚を可能な限り薄くする手法をベースとしたアプローチで研究を行う。このアプローチは、他の気体の分離技術にも応用できる。吸着もまた取り組むべき課題である。二酸化炭素吸着として、多孔配位高分子(MOFs)、ゼオライトを含む多孔質材料の開発に向け努力している。

 

二酸化炭素の利用 

地中炭素貯留は、大気中の二酸化炭素レベルの上昇を抑制するために用いられる方法のひとつであろう。貯留は今や広く受け入れられた「安定化のくさび」的アプローチの一部で、2004年サイエンス誌に掲載されたPacalaとSoclowによる有名な論文により世に紹介された(第305巻、968-972ページ)。二酸化炭素の回収と地中貯留のような安定化のくさびの多くは、実質的にコストがかかるが、利益に結び付く可能性が全くない。それに対し、二酸化炭素は別の価値ある化合物に変換できる炭素源のひとつであるため、二酸化炭素の利用は最近注目されている。このように、このプロジェクトでは、電気化学的還元によって回収・精製した二酸化炭素を有益な化学薬品に変換し、二酸化炭素回収費用を取り戻す可能性のあるアプローチ(可能性のある付加的な安定化のくさび)を模索している。このプロセスは、世界中の様々な場所で利用可能であり、間欠的な再生可能エネルギーの大量な余剰分によって行う。さらに、二酸化炭素を化成品原料(出発物質)として利用することにより、化石燃料への依存度を減らすことができる。二酸化炭素貯留に代わる選択肢としての二酸化炭素回収から利用までの全体像を描くために、我々は二酸化炭素利用法の研究の必要性を強く信じている。既述のとおり、二酸化炭素の回収、分離、地中貯留はかなり費用がかかるが、利益を生まないプロセスである。対照的に、化学変換後の(地中貯留を行わない)二酸化炭素の回収と分離は、経済的価値を生み出す可能性を秘めている。

 

今後の方向性

溶液吸収というアプローチは、最も確立した技術であるが、それを導入及び流通させるにはさらなるコスト削減が必要となる。I2CNER では、さらに効率的な技術に到達するための薄膜および吸着剤を用いた二酸化炭素の分離に焦点を当てていく。

 

二酸化炭素回収・分離 

膜分離(谷口准教授、藤川准教授) 

膜分離の目標を、二酸化炭素と水素を分離するIGCC発電所に置く。今までに数多くの二酸化炭素分離薄膜が開発されてきたが、成功例はとても少ない。谷口准教授が開発に関与したデンドリマー膜は、二酸化炭素分離効果が最も高い側面があることを示している。加圧下における分離係数(浸透率)と二酸化炭素の浸透性はそれぞれ30および1.0 x 10-10 m3(STP)/(m2 s Pa)であった。しかし、導入には分離係数は十分なレベルに達しているものの、二酸化炭素の浸透率は7.5 x 10-10 m3(STP)/(m2 s Pa)に上げる必要がある。二酸化炭素の浸透性は薄膜厚に反比例(10-500 m)することがわかっており、これは二酸化炭素の浸透は拡散に影響されることを意味する。二酸化炭素の浸透率を上げるには、薄膜厚を少なくすればよい。これらの側面とマイルストーンを考慮すると、膜材料のデザインと薄膜厚減少に注力する必要がある。

多孔質材料(草壁教授) 

有機および無機複合材料は、二酸化炭素を吸着する多孔質構造デザインに大きな可能性を持つため、これらによる様々の吸着材料探索は重要である。本研究の目的は、MOFsやゼオライトを含む多孔質材料の開発である。2011年度は、有機配位子と金属イオンでできた多孔質結晶構造のサイズの大きなMOF-5の製作に成功した。今後、このサイズの大きなMOF結晶を用い、気体の吸着機能を評価する。初期の実験結果を基に、構造を再デザインし、二酸化炭素の吸脱着特性を改善させる。既に濾過サポート上での多孔質材料からなる薄膜の作製に関する予備的な結果が得られている。この濾過サポート上の多孔質薄膜は、効率的な二酸化炭素分離薄膜としての高い可能性を持つ。

 

二酸化炭素変換 

2012年度、Kenis教授は燃料電池部門との緊密な連携の下、二酸化炭素から一酸化炭素への選択的変換用に特に有望な3つの触媒材料を特定した- (1)auナノ粒子担持ポリマー被覆複層カーボンナノチューブ (中嶋教授、藤ヶ谷准教授、Gewirth教授との共同研究)、(2) 有機金属触媒(Gewirth教授との共同研究)、(3)金属フリー炭窒化物触媒(Lyth助教との共同研究)

これらの触媒は商用プロセスの開発に必要な基準に近づきつつある-ファラデー効率:95%以上、エネルギー効率:60%以上、電流密度:200 mA/cm2以上。

 

以上の観点と当部門の研究目標を考慮すると、2013年と2014年は次の3つの点に重点を置く-上記触媒のさらに詳しい特性評価とそれら触媒の最適化、電極への導入も含めた電極構造の最適化、そして商品化へ向けた可能性に関し、ビジョンとして描いたプロセスの評価を実施する。

論文一覧

主任研究者

 藤川 茂紀 (部門長)
九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K004452/index.html

研究者

  • 谷口 育雄
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
    http://i2cner.kyushu-u.ac.jp/~ikuot/
  • 有吉 美帆
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
  • Roman Selyanchyn
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
  • Benny Freeman
    テキサス大学オースティン校(米国)
  • 草壁 克己 (WPI招へい教授)
    崇城大学 工学部
  • Paul Kenis
    イリノイ大学 ア-バナ・シャンペーン校(米国)
  • 國武 豊喜 (WPI招へい教授)
    財団法人 北九州産業学術推進機構 理事長

研究支援者

  • Sichao Ma
    イリノイ大学 ア-バナ・シャンペーン校(米国)
  • 衣笠 佳恵
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
  • 豊田 摩理子
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
  • Anteneh Mersha
    九州大学 大学院 工学府 物質創造工学専攻
  • 冨松 利江
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
  • セリャンチン オレナ
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所

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