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水素適合材料研究部門

研究内容

 

●目的

本部門の研究目的は、高圧水素貯蔵システムのコスト、性能、安全性の最適化を可能にする基礎科学を提供することです。特に水素による材料の疲労、破壊、トライボロジーに及ぼす影響を解明するための実験方法とモデルの開発、耐水素性のある低コストで高性能(高強度など)をもつ次世代高度材料の開発を目指しています。

 

ロードマップ

  

研究ハイライト

当部門の研究は、短期、中期、長期技術目標及び研究目標に沿って進められる。まず当セクションでは短中期目標へ向けての進展について述べる。次のセクションで重要な研究成果2件について詳細を報告する。

当部門の短期技術目標は、水素ガス貯蔵及び供給のための安全で信頼性のある部品(バルブ、パイプ、シール等)、高圧容器、コンプレッサー等の普及である。ここに述べる研究は、技術目標から生じた以下の研究目標によって実施したものである。すなわち、構造材料の水素起因の劣化に関わる支配的因子及びメカニズムの解明、及びその劣化の特徴を説明する方法の最適化である。前者の研究目標、すなわち水素起因の材料劣化のメカニズム解明は、疲労、破壊とともに摩擦、摩耗に関連している。

 

次のセクションで述べる重要な研究成果のひとつは、短期研究目標と関わりがある。Robertson教授チームによる成果は、疲労き裂成長において繰返し変形によって誘起されるミクロ構造の変化の本質について新たな解釈を与えるものである。さらに、この加工によって誘起されるミクロ構造変化は水素の顕著な影響を受けることが実験によってわかった。従来困難であったこのような観察が可能になったのは、最先端の材料特性評価方法によるものである。これらの成果は、最近「International Journal of Fatigueに掲載され、昨年報告した研究活動が着実に成果を生み出してきたことを表している。また、異なる材料システムを研究している他のチームが、並行して以下の結果を出している。例えば、久保田教授チームは銅においても繰返し変形における水素の影響があることを示した。この新しい研究では、水素はすべり帯の生成を顕著に助長することがわかった。銅は水素関連技術に関わる構造材料として高い優先順位があるものではないが、水素と変形との相互作用に関する基礎的知見を得るためのよいモデル材料である。さらに、山辺准教授グループは、高強度鋼における水素ぜい化メカニズムについて、結晶粒界での変形双晶の相互作用が関与している可能性を見いだし、その機構の解釈について2012年「International Journal of Fracture」に発表した。

 

その他2件の研究が、昨年度より継続して実施されている。Somerday博士が2012年度の報告書において、低強度鋼の水素による疲労き裂進展助長のメカニズムに粒間破壊が関わっていると指摘した点を立証するために、Somerday博士と高木教授チームが共同で実験を考案している。高木教授チームは実験に必要なモデル材料であるFe-C 合金を調達し、特性を調べた。また摩擦及び摩耗の研究を行っている杉村教授チームは、低接触面圧の滑り接触下で形成された酸化膜が鋼への水素侵入を遮断することを昨年度報告したが、その継続研究において、接触面圧や温度など表面酸化に影響を及ぼす他の因子が水素侵入に影響を及ぼすことがわかった。このような、固体表面間の滑りや接触において水素侵入に影響を及ぼす基本的過程や因子を探求する研究は、水素起因の疲労や破壊の基礎的メカニズムに関わるき裂先端での水素取り込みに関する研究を補完するものである。

 

今後の方向性

水素構造材料部門は、今後、短中長期技術目標及び研究目標に沿って研究を進めて行く。今後の研究活動に共通していることは、連携の強化である。部門内はもちろん他部門、他機関との協力体制を構築する。短中期目標に関する共同研究を以下に取り上げる。

(i)短期

短期目標として、疲労、破壊、摩擦、摩耗を引き起こす機械的負荷下にある鋼の水素起因劣化を支配する因子とメカニズムの解明を目的とした基礎研究に焦点を置く。例えば、疲労・破壊を専門とするRobertson教授チームと摩擦・摩耗を専門とする杉村教授チームが共同研究を実施し、しゅう動下におけるミクロ構造の変化に及ぼす水素の影響を解明する。既に共同研究は開始されており、表面損傷特性が明らかとなっているサンプルのミクロ構造の探求を行っている。

また、Somerday博士チームと高木教授チームも当目標に基づき、共同研究を実施している。以前報告したとおり、Somerday博士は水素ガス中で低強度鋼について行った疲労き裂進展試験から水素ぜい化は粒界破壊と関連があることを発見し、水素起因粒界破壊の機械的シナリオをいくつか提案した。この研究の発展として、モデルFe-C合金で実験を行う。最初の実験では、結晶粒サイズが異なる2つのFe-C合金で行う。実験で使用する合金は、すでに高木教授チームが調達し組織の調査を終えている。初期疲労き裂進展試験は、Somerday博士と高木教授チームのMacadre学術研究員が協力し、今年夏か初秋にサンディア国立研究所にて実施予定である。

(ii)中期

中期研究目標は、異なる長さスケールでの、水素起因劣化と材料特性との関係を予測するモデルの構築である。

当目標達成のため、Sofronis教授チームは水素による結晶の可塑性に関する新しい構成モデルを完成させるために共同研究を実施する。すでにそのモデルの枠組みはAravasWPI教授とともに提案しているが、さらなる発展のために実験から得られる知見が必要である。これらの実験は複雑なものであり、水素曝露した単結晶金属の圧縮試験を含む。機械的負荷と水素濃度の境界条件が精度よく与えられなければならない。実験の計画及び実施は、Somerday博士と久保田教授が行う。

論文一覧

主任研究者

 Brian P. Somerday (部門長)
サウスウェスト研究所 (米国)

 Petros Sofronis
イリノイ大学 ア-バナ・シャンペーン校(米国)
http://engineering.illinois.edu/directory/profile/sofronis

 杉村 丈一
九州大学 大学院 工学研究院 機械工学部門
http://tribo1.mech.kyushu-u.ac.jp/TR/index-j.html

 高木 節雄
九州大学 大学院 工学研究院 材料工学部門
http://takaki.zaiko.kyushu-u.ac.jp/

 Reiner Kirchheim
ゲッティンゲン大学 (ドイツ)
http://www.material.physik.uni-goettingen.de/index.php?site=kirchheim_info

 Ian Robertson
ウィスコンシン大学マディソン校(米国)
http://www.engr.wisc.edu/ian-robertson.html

研究者

  • 久保田 祐信
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
  • 澤江 義則
    九州大学 大学院 工学研究院 機械工学部門
  • 土山 聡宏
    九州大学 大学院 工学研究院 材料工学部門
  • Nikolaos Aravas
    テッサリー大学 機械工学部門(ギリシャ)
  • 松永 久生
    九州大学 大学院 工学研究院 機械工学部門
  • 山辺 純一郎
    九州大学 水素エネルギー国際研究センター
  • 田中 宏昌
    九州大学 大学院 工学研究院 機械工学部門
  • 森田 健敬
    九州大学 大学院 工学研究院 機械工学部門
  • Arnaud Paul Alain Macadre
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
  • 福田 応夫 (WPI招へい教授)
  • Robert O. Ritchie
    カリフォルニア大学バークレー校(米国)
  • 八木 和行
    九州大学 大学院 工学研究院
  • 赤間 大地
    九州大学 大学院 工学研究院
  • Mohsen Dadfarnia
    イリノイ大学 ア-バナ・シャンペーン校(米国)
  • 山口 哲生
    九州大学 大学院 工学研究院 機械工学部門
  • 松田 潤子
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
  • 長尾 彰英
  • Pravakaran Saravanan
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
  • Niste Vlad Bogdan
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
  • 松江 要
    九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所応用理論研究部門
    http://www.imi.kyushu-u.ac.jp/academic_staffs/view/208

研究支援者

  • Seyedehzahra Hosseninisarani
    イリノイ大学 ア-バナ・シャンペーン校(米国)
  • Kelly Nygren
    イリノイ大学 ア-バナ・シャンペーン校(米国)
  • 増村 拓朗
    九州大学 大学院工学府 材料物性工学専攻
  • 鬼塚 修吾
    九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
  • 荒木 理
    九州大学 大学院工学府 材料物性工学専攻

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