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セミナー・シンポジウム

I²CNERキックオフ・シンポジウムを開催しました



 

 

 平成23年2月1日(火)、文部科学省の「世界トップレベル研究拠点プログラム(World Premier International Research Center Initiative:WPI)」の採択を受けて昨年12月に開所した当研究所(I²CNERアイスナー)は、伊都キャンパスの稲盛財団記念館稲盛ホールにおいてキックオフ・シンポジウムを開催し、学内外から約160名が参加しました。

 

 当日は、文部科学省の合田 隆史 科学技術・学術政策局長(代読)をはじめ、黒木 登志夫 WPIプログラム・ディレクター、東 義 福岡水素エネルギー戦略会議幹事長、アン・エミッグ 米国国立科学財団(NSF)東京事務所長から、祝辞としてI²CNERの今後の活動に向けた期待の言葉が寄せられました。

 ペトロス・ソフロニスI²CNER所長によるオープニングレクチャーでは、水素社会の早期実現およびCO²の削減への貢献を目指し、アメリカをはじめとした世界の研究施設との提携が必要であること、また学生や研究者同士の活発な交流が必要であることが強調されました。

 

 引き続き、I²CNERの主任研究者であるロバート・リッチー カリフォルニア大学教授、佐々木一成I²CNER副所長、ロバート・フィンリー イリノイ大学教授による基調講演(以下、概要掲載)が行われた後、午後の部では、九州大学、海外の大学の主任研究者、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の教授等による講演(以下、概要掲載)が行われ、最後に、笠木 伸英WPIプログラム・オフィサーのメッセージにより締めくくりました。

 

また、シンポジウム終了後には、村上 敬宜I²CNER所長代理及び佐々木副所長等による水素研究施設、実証サイト(水素ステーションや水素燃料自動車)での説明が行われ、約50名の参加者が見学しました。

 

【写真】
(上)ペトロス・ソフロニス所長
(中)シンポジウム会場(前列:左からリッチー教授,ソフロニス所長,村上所長代理,後列:タラー教授)
(下)シンポジウム参加者

 

YouTube動画

 

 

 

 

基 調 講 演 (座長:村上 敬宜 I2CNER所長代理)  

 


Robert O. Ritchie

カリフォルニア大学バークレー校教授

演題:鉄鋼の亀裂伝播加速における水素の役割」

  

Ritchie教授らのグループは、水素を生じたり(例えば、湿分を帯びた空気中)、水素を含む(例えば、低/高圧の水素ガス)環境において、水素が助長する低合金鋼の亀裂について、その構造と機構について調査した。 

 

鋼鉄は金属材料として非常に広範囲に使用されているが、Ritchie教授は全ての鉄鋼はどのような形態においても水素の影響を受けて劣化しやすいと説明する。水素脆化に耐える合金は容易には見いだせない。従って、航空宇宙分野で疲労破壊の問題を適切に取り扱っているのと同様に、水素が存在する環境下において金属材料を使用する場合には、構造部材破壊の可能性を適切に予測し、破壊に至らないよう総合的に管理する計画が必要である。

 

 

 

佐々木 一成

I2CNER副所長 九州大学教授 

演題: 「燃料電池科学の現状と今後の課題について」 

 

本基調講演では、燃料電池に関わる基礎研究の現状と今後の展望について説明が行われた。 

 

新規材料研究に焦点を当てることで、電気工学技術への固体エレクトロニクスに相当する、次世代型の燃料電池及び電気化学的デバイスに関する固体イオニクスの基礎学理が確立される。科学上の成果や新材料の提案に基づき、基礎的な材料・デバイス設計指針を確立でき、その原理が定置用、自動車用、携帯機器用燃料電池や関連する電気化学的応用に生かされることで、数十パーセントのCO²排出量の大幅な削減とカーボンニュートラルエネルギー社会の実現に役立つだろう。

  

 


Robert J. Finley

イリノイ大学教授

演題:  二酸化炭素をめぐる問題と地中貯留の果たす役割

 

講演の冒頭では、現状の諸政策に変化がなければ、エネルギー使用に伴う世界のCO²排出量は2007年から2035年にかけて43%増加するとの指摘がなされた。

 

中西部地中貯留コンソーシアム(MGSC)は、米国エネルギー省による助成を受けている7つの地域地中貯留共同体の一つであり、イリノイCO²中貯留の選択肢に関する研究を行っている。 イリノイ盆地はイリノイ州の大部分とインディアナ州西部及びケンタッキー州西部を占めており、比較的深く薄い石炭層、数多くの油井、深い塩水層にCO²を貯留できる可能性がある。

 

 

 

講  演(座長:David G. Cahill イリノイ大学教授) 

  

石原 達己

九州大学教授

演題:「人工光合成による水素製造」

 

現在水素は水蒸気改質によって製造されているが、これは発熱反応であるため水素製造の際多くのCO²排出を伴う。 

 

ゆえに現在最も理想的なエネルギー製造方法は「人工光合成」と呼ばれるものである。これまで人工光合成についての多くの研究がなされてきたが、自然界において実際に光合成で使用した二重光励起システムによる水素製造が成功した例はまだない。

  

現在にいたるまで有機半導体への電子の注入は極めて難しかったが、この研究は有機半導体の自己組織化が有機半導体への電子注入に有益だと証明した。また、このシステムにおいて分離効率と界面活性の増加が求められている。

 

個々の光合成だけではなく、太陽電池への展開と高温電解槽の組合せへの研究も行う。

 

  

John A. Kilner

英国インペリアル・カレッジ・ロンドン教授

演題:「高温下での水蒸気電解のための材料」

 

講演では、水を分解して水素と酸素を製造する高温水蒸気電気分解(HTE)のための材料を目指した基礎研究について述べられた。このような研究は材料的要求と密接に関係したものである。

  

講演では3つの手法について説明がなされた。既存の低温での電気分解は多くの電力を消費する。他方で、固体酸化物形電気分解セルを用いた高温電気分解には有利な点があるものの、密閉性、材料の熱的安定性、コストなどの点で課題がある。従って、中温域における電気分解についての研究を行っている。

 

新しい材料の開発は材料の適切な選定と材料表面に関する十分な知見に基づいて行われることが必要であり、実験及び数値解析の両面からの検討がなされるべきである。

 

 

 

秋葉 悦男

九州大学教授

演題:エネルギーの未来と貯蔵について」 

 

燃料電池自動車の市場完全実用化は2015年と予測されており、福岡を含む4都市に水素ステーションの設置が見込まれている。

 

しかし、現在ボリューム(50 g/L)・重さ(6 wt%)・エネルギー効率・費用(50万円以下)の要素を全て同時に満たす水素貯蔵および輸送の適当な方法はないため、水素貯蔵材料はそれらを実現するもっとも有望な候補と考えられている。

 

当部門では、もっとも可能性の高い候補の選択(金属/合金、無機・有機化合物、炭素材料など)を行い、様々な方法を用いた水素と材料系の機構解明を進めることによって、高性能材料の性能向上(目標:6質量%(システム)以上)を目指すこととしている。

 

 

 

Louis Schlapbach

チューリッヒ工科大学名誉教授

演題:「将来のエネルギー技術-水素とその貯蔵に着目して」

 

将来のエネルギー技術について考えると、温室効果ガスや地球温暖化等の問題を解決できる持続可能な方法が必要である。言いかえれば、高度なシステムにおけるエネルギーや物質の効率的な利用などの持続可能性が必要である。本講演においては、チューリッヒのChriesbachフォーラムという太陽光・熱を活用した近代化ビルについて紹介した。

 

講演ではまた実例を示しながらエネルギーキャリアとしての水素の貯蔵や安全性について述べた。水素は、無毒、燃焼しても二酸化炭素の排出を伴わない、無尽蔵であるという特性から将来のエネルギーとして期待されている。将来的には、このような効率的なエネルギー技術について社会がより広く受け入れていくことが望まれるだろう。

 

 

 

柳 哲雄

九州大学教授

演題:「海洋中での炭素回収と貯留について」

   

海洋へのCO²廃棄は1996年のロンドン条約により禁止されているが、海底下の岩中へのCO²貯留は2006年に認められた。つまり、科学的評価を明らかにすることによりCO²の深海貯留が許可される可能性があるということである。そのためには、CO²の長期的な反応と海洋の酸性化による環境への影響の解明や、海洋貯留を一般へ理解してもらうための科学的データの提供が必要である。

 

現在まで、CO²海洋貯留による海洋/CO²系の安定性や環境影響への問題については未解決のままである。

 

海洋CCS(CO²回収と貯留)に対する社会的合意を得るために、中規模渦や湧昇流の影響下におけるCO²の安定性と、海洋酸性化及びCO²バイオポンプによる生物学的な影響について、研究が進められている。

  

 

 

Brian P. Somerday

米サンディア国立研究所研究員

演題:水素ガス中におけるフェライト鋼の耐疲労性の改善について

  

フェライト鋼は低いコストと加工の多様性という点において大型のガス容器にとってに魅力的な構造材料である。しかし、フェライト鋼には疲労き裂の進展が水素によって加速されることを含めて、水素脆化に関する多数の兆候が現れる。

 

水素ガスの容器はは高圧で繰り返して使用されるため、設計においてこの亀裂の進展を十分考慮しなければならない。水素によって疲労亀裂が進展することに対するフェライト鋼の耐性を改善することによって水素容器にこのような材料を安全に使用することが可能となる。

 

 

 

Angus Rockett

イリノイ大学教授

演題:光電気化学と水素製造のための材料とデバイス

  

研究の目的:

●廃棄物や二酸化炭素などの副生成物を伴わない高効率な物質変換プロセスの開発

●再生可能エネルギーによって駆動される電気化学反応

●光触媒による水の分解のような革新的で持続可能な水素製造法の開発

光触媒デバイス及び革新的光発電

 

 

 

Andrew A. Gewirth

イリノイ大学教授

演題:「触媒作用、特性評価とマイクロ流体工学について」

  

講演では、イリノイ大学で行われている燃料電池に関する研究について、触媒作用、材料・機構の特性評価、マイクロ流体による特性評価技術の使用を中心に概要が説明された。 

 

研究で重要視されているのは様々な電極表面における酸素還元反応の機構を理解することであり、それいによって白金や貴金属を用いない新しい燃料電池用触媒の開発につながる。

 

酸素還元反応や燃料電池に関連した他の過程の特性評価については、STM(走査トンネル顕微鏡)及びAFM(原子間力顕微鏡)、振動分光法、X線吸収分光法、及び、TEM(高解像度浸透型電子顕微鏡)よる観察を中心に行われており、得られた結果についての議論を行う。

 

 

 

James F. Stubbins

イリノイ大学教授

演題:原子力エネルギーを利用した水素製造:その方法、課題と利点

  

原子力エネルギーは二酸化炭素を増加させることなく水素を製造するために最も有望なエネルギー源の一つである。その中でも、最も効率的な方法は高温ガス炉を熱源として用い、熱化学反応によって水素を製造することである。米国及びその協力国は次世代型原子力プラントとして高温ガス炉を開発中である。日本においては、高温工学試験研究炉が稼働中である。

 

高効率で水素を製造するためにこのような次世代型の原子炉は有望であるが、水素製造のための熱化学反応の効率は、いかにして高温を達成するかにかかっている。そのため、高温下の厳しい環境に耐えうる機械的特性を持ったプラントの開発が主要課題となっている。

 

本講演においては原子力エネルギーを用いた水素製造システムの利点と課題を概観した。

 

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