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2015.10.16

平成27年度PIREプログラムに「化学燃料製造における活性な材料・界面の計算材料工学による設計」が採択!

■ 概要

 九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)/大学院工学研究院の石原達己主幹教授(日本側代表)と米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)のAluru Narayana教授(米国側代表)は、「化学燃料製造における活性な材料・界面の計算材料工学による設計」に関する共同研究を開始します。

 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)の国際共同研究教育パートナーシッププログラム(PIREプログラム)として採択されました。PIREプログラムは、JSPSと米国国立科学財団(NSF)との合意により開始された事業で、一国のみでは解決が困難な課題に対して、国際共同研究を実施することで資源の共有や研究設備の共用化等を通じた相乗効果を発揮するとともに、若手研究者等に国際共同研究の機会を提供することを目的として開始されたものです。PIREプログラムは最長5年間のプログラムで、1課題あたりJSPSからおよそ5,000万円、NSFからおよそ400万ドルが支給される予定です。また、平成27年12月7日(月)にUIUCにおいてキックオフシンポジウムを開催します。

 

■ 背景

 近年、風力や太陽光など、再生可能エネルギー由来の電力の利用が増加していますが、日間・年間の変動が大きいため、その普及にはエネルギー貯蔵技術が重要となります。しかしながら、膨大な量のエネルギーを貯蔵できるような技術はまだありません。再生可能エネルギー由来の電力利用を促進するためには、電気エネルギーを変換・貯蔵する能力とコストの合理性を兼ね備えた蓄エネルギー技術とその大きな進歩が不可欠です。固体酸化物形電解セル(SOEC)(※1)は電気エネルギーを用いて水蒸気を効率よく電解して水素を製造する手法です。電気を化学燃料に変換する役割を担うことができ、また、水蒸気電解モードと燃料電池モードを可逆的に作動させるにことにより蓄電池として機能します。後者は、他の蓄電池(ニッケル・カドミウム、鉛、フロー)や圧縮空気によるエネルギー貯蔵と比べて、キロワット時当たりのコスト及び寿命において、揚水式電気貯蔵に対抗し得る唯一の技術です。そこで、I2CNERとUIUCをはじめとする研究機関がこの難題に取り組むべく協力体制を確立します。

 

■ 内容

 原理上、固体酸化物形電解セル(SOEC)は、①電解水素による高効率な化学燃料生産の手段を提供し、②燃料電池モードでの作動と組み合わせることで蓄電の機能を備えます。また、③水と二酸化炭素の共電気分解によるメタンやCOなどの化学燃料の生産を行うことも可能であり、作動条件や適用性における柔軟性を持っています。さらに、高価な金属触媒を必要としないため、大規模なエネルギー変換に適しています。しかし、この技術が幅広く採用されるには、変換効率は依然低く、作動温度が高いため劣化が顕著です。PIREプログラムにおける本研究では、これらの重大な3つの点に焦点を当て取り組みます。
 UIUCの米国立スーパーコンピュータ応用研究所(NCSA)は、ブルーウォータースーパーコンピュータ(※2)のリソースを駆使して本プロジェクトにおける各種シミュレーションを担当し、I2CNERはインペリアルカレッジロンドンと連携して実験による実証を担当します。

 

■ 効果

 本研究の最大の特徴は、計算科学による材料の物性予測に基づく、Computer-drivenな電解質、電極材料及びSOECの研究・開発を進めるという研究方針により、これまでに人知の及んでいない新規材料に到達するということです。SOECの高性能化が実現すれば、将来的にはカーボンニュートラル・エネルギー社会の実現に大きく貢献できるものと期待されます。

 

■ 用語解説

(※1)固体酸化物形電解セル(SOEC、Solid Oxide Electrolysis Cell):固体酸化物を電解質とした電解セル。水蒸気を電解して水素(と酸素)を製造することができ、電気による化学燃料の生産に重要な「電気を水素に変換する手法」を提供する。原理的には、同じセルを固体酸化物燃料電池(SOFC)として作動させることができ、燃料電池と電気分解の両モードで作動させることで蓄電池として機能する(水素の貯蔵は別途必要。I2CNERでは水素の貯蔵についても最先端技術の研究を行っている)。また、二酸化炭素と水蒸気を共電解することによりメタンや合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)を製造することも可能である。

(※2)ブルーウォータースーパーコンピュータ:米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校に設置されている、世界有数のスーパーコンピュータ。

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