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2013.10.16

カーボンナノチューブの電子準位を決定出来る「経験式」を確立

2013年10月16日、九州大学大学院工学研究院応用化学部門教授及び九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER燃料電池研究部門主任研究者である中嶋直敏教授の研究グループは、Nature姉妹誌のオンラインジャーナルである『Scientific Reports』に研究成果を発表しました。

 

■ 概要

九州大学大学院工学研究院/カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER)の中嶋直敏教授、Gergely Juhasz 博士(工学研究院)及び平兮康彦(ひらなやすひこ)博士(工学研究院)の研究グループは、京都大学の松田一成教授、宮内雄平准教授らとの共同研究で、単層カーボンナノチューブ(SWNT)の電子準位を「実験なし」で決定出来る「経験式」を確立しました。CNTは、21世紀の科学技術の鍵物質として期待されている新素材で、多彩な分野への応用が進行中です。本研究成果は 2013 年 10 月 16日 午前10時英国時間、Nature 系オンラインジャーナル「Scientific Reports」に掲載されます。

 

■ 背景

単層CNT(SWNT)は螺旋度(巻き方)が異なった多くの混合物として合成され、これらはカイラリティ(n,m)SWNTで表記されます。この(n,m)の値が異なると電子準位(酸化電位、還元電位、フェルミ準位、仕事関数)が異なります。研究グループは、2009年に、「その場フォトルミネッセンス分光電気化学」※により (n,m)SWNT(直径0.7〜1.1nm)の電子準位を実験的に決定できることを報告しています。しかし図1に示す様にSWNTには、巻き方(n,m)が異なる(直径も異なる)多くのSWNTが存在し、これらの違いにより、電子準位が異なります。ところが、これらを実験的に決定出来るのは、直径0.7〜1.5nmのSWNTに限られます(実際、1.2nmより大きいと実験的決定も容易ではない)。直径が1.5nmより大きくなると、孤立溶解(一本一本バラバラにほどけた状態)SWNTの調製が困難なこと、また、0.7nmのSWNTは合成SWNTの中で、存在量自体が極めて少ない、という理由で、これらの(n,m)SWNTの電子準位は「実験なし」で決定する必要があります。このためには、「経験式」が必要となります。

 

「その場フォトルミネッセンス分光電気化学」とは、「フォトルミネッセンスとその電場依存性を同時に測定する手法」で、本研究では、測定対象物がカーボンナノチューブです。

 

■ 内容

論文では、まず、「その場フォトルミネッセンス分光電気化学」が適用出来る直径が小さい(5,4)SWNTs (d = 0.620 nm)の電子準位を決定し、以前決定した18種の(n,m)SWNT のデータと合わせ、直径0.5~2.5nmの電子準位を決定できる「経験式」を導き出すことに成功しています。これを用いて決定した220種のmod=1もしくはmod=2(巻き方のファミリーパターン)の(n,m)SWNTの酸化電位(Eox)、還元電位(Ered)及びフェルミ準位(EF)をSWNTの直径に対して示したデータを図2に示しています。また、論文では、導き出した「経験式」を計算化学による理論的な値と比較し、「経験式」の優位性を明らかにしています。

 

■ 効果及び今後の展開

電子準位は、SWNTの基礎基盤特性であり、公開された論文は、カーボンナノチューブ科学に大きな学問的寄与を成すものです。電子準位が異なると(n,m)SWNTの物性(電子的性質など)が異なってきます。電子準位を知ることによって、CNTの様々な分野(エネルギー、エレクトロニクス、ナノ材料、複合材料など)への利用/応用に対して、目的の材料/システムのデザイン、構築をより適切に、精密に行なうことが可能となります。 

 

 図1.SWNT直径(横軸)に対するそれらの電子準位(縦軸)

 

図2.「経験式」で決定したSWNTの電子準位(縦軸).d:SWNTの直径

 

 

■ 論文タイトル

Title: 

Empirical Prediction of Electronic Potentials of Single-Walled Carbon Nanotubes With a Specific Chirality (n,m)

 

DOI: 10.1038/srep02959

Publication Date(online): Oct. 16, 2013

 

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<報道記事>

◇ マイナビニュース

◇ 日本の研究.com

 

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